MORE Trumpet

音楽好きな自営業者でトランペッター

生きるということを考える

ライブ会場界隈でよく見かける「名物おばさん」がいる。愛称は「かよかよ」と皆に呼ばれている。

ある日、ライブ後に声を掛けられた「あんた誰かに似とうちゃんねー誰やったかいなー」面識のない酔っ払いのおばさんにこんな声を掛けられたら普通は気を悪くしそうだけど、これが「かよかよ」なのだと受け入れた。

知り合いのライブに行くと大抵かよかよは居る。小さな体のかよかよは存在感は無いけど、皆に愛されているのがよく分かる。

かよかよは、いつも遅い時間まで酒を飲み「私は音楽はせんちゃけど、バンドのライブを観るのが好きちゃんねー」が口癖。

そんなかよかよと、次第に仲良くなった。仲良くと言っても会ったらよく話す間柄になった程度。かよかよは色んな話をしてくれた。

シングルマザーで息子をひとりで苦労して育てたとか、今は団地に一人暮らしだとか、別に住む90いくつの母親の介護が大変だとか、息子の再婚相手の話とか、横浜に住む孫の話しなどなどをいつも一方的に話してくる。

自宅が近いのでタクシーで一緒に帰ることもしばしばある。過去に酔っぱらって足を踏み外して階段から転げ落ち頭を切ったり、足を骨折して救急車で運ばれたことがあったそうで、店のひとから出来るだけ「かよかよと帰ってくれないか」と頼まれたこともあり、一緒に帰るようになった。

それを見かけた知り合いのバンドマンから「お持ち帰り~」と冷やかされることもあるけど、60過ぎのかよかよに対してボランティア精神以外なにものでも無いのだ(笑)

年末だったかな、深夜にタクシーで帰っている途中に急に「ドライバーさん聞いて、先月父が無くなってね…」と泣きなが話していた。タクシードライバーも「大変でしたね」と優しく返答されていた。

この日のかよかよは凄く酔っていたのを覚えている。 きっと父親が亡くなったのがよほど悲しかったのだろう。

数日後にかよかよと会った時に、「この前、凄く酔ってたね」と聞いたら全然覚えてなかった。まっいつものかよかよらしい話だ。

 

3月中頃バンドマンが多く集まるバーで「かよかよが倒れて入院してるらしいよ」と店の人から聞いた。詳しい話はそれ以上分からないと云う。

後日、かよかよの息子の同級生が知り合いにいるので訪ねて息子に確認を取ってもらえるようにお願いした。

先週やっと息子と連絡が取れたそうで詳細が分かった。容体はとても悪いと。

翌日、教えてもらった病院に行くと、変わり果てた姿でかよかよはベットに横になっていた。

半身不随で目と右手しか動いていないかよかよと筆談した。

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「また酒を飲み、たばこを吸いながらライブに行ける日が来る」「がんばれ」と声をかけた。

この世には神も仏もいないのだろうか、どうしてかよかよから全てを奪うのだろう。